英語を学ぶための一番の素地

NHKの『視点・論点』という10分番組(11月6日放送分)で、
通訳者の鳥飼玖美子さんが「小学校の英語教育はどうなるのか」
というタイトルでお話をしていました。

「小学校の英語教育はどうなるのか」(視点・論点)
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/308968.html
(『視点・論点』の過去の放送はすべて文字化されています)

鳥飼さんは通訳を仕事にしている立場から、
英語の早期教育に以前から疑問を投げかけています。
11月6日分でも、放送の後半では、
小学生の子供を持つ親御さんに向けてメッセージを述べています。
その部分を引用します。

小学生を持つ親御さんなど保護者の方々には、
小学校の英語教育で英語が完璧にできるようになる、
などという幻想を持たないでいただきたいと思います。

どのみち小学校で週に1回か2回勉強すれば
誰もが英語を話せるようになるというわけではありません。
簡単な日常会話のパターンを覚えるだけでは、
仕事に使える英語にはならないのです。

英語をコミュニケーションに使えるようになるためには、
中学と高校での基礎作りが欠かせません。
英語を読んで単語や表現を学んで、
それを書いてみる、口に出して言ってみる。
そういう地道な練習が土台となって、
英語を話す力が少しずつ培われていくのです。

学校英語教育で教えるべきは、
語彙や発音や文法などの言語知識と、
一貫性を持って書いたり話したりする力です。
その上で、英語圏の社会で適切とされる表現やコミュニケーションの方法など、
「社会言語能力」を、時間をかけて学んでいかなければなりません。

そもそも外国語は、
生涯をかけて学ぶものです。

まして英語は、
文法も発音もコミュニケーション・スタイルも、
全てが日本語とは全く違う外国語です。
話せるようになるまで時間がかかるのは、
仕方のないことです。

この中で使われている「社会言語能力」という言葉は、
言葉以外に含まれている社会・文化的な文脈を判断して、
状況に応じて適切な表現を使う能力のことを指します。

例えば、
フォーマルな場面では、「〜したい」は
「want to 〜」ではなく「would like to 〜」が好まれる
といったようなことは、
教科書を読んだだけではなかなか身につかないと
鳥飼さんは言っているわけです。
状況によって「want to 〜」は
子供っぽい印象を与えることもあります。

他にも、外国人観光客に
「どうして日本に来たんですか?」と訊くときには、
「Why did you come to Japan?」ではなく、
「What brought you to Japan?」の方がやっぱり好まれます。
と、こういう事例は枚挙にいとまがありません。

話を戻しますと、
鳥飼さんは視点・論点の最後に
母語で培った感情や体験が、外国語を学ぶ素地になる
だから小学校では、母語を通した学びを大切にしてほしいと語りかけます。

小学校で始まった英語教育に
「うちの子が授業についていけなくなったらどうしよう」と
不安をお感じになっている保護者の方が非常に多いように感じます。

小学校の段階では、英語の授業についていけてもいけなくても、
寛大な心で子どもたちを見守っていただけたらなと思います。
そして、日本語を通しての体験、日本語を豊かにする体験を多く積んでほしいと思います。


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